古典物理学から現代物理学へ

日常生活で接する物理学的現象の基本法則は19世紀までに完成しています。現在で はそれを「古典物理学」と呼びます。しかし「古典」という言葉からこの物理学を軽 視することはできません。古典物理学は日常生活の範囲では十分に精密なのです。た とえば人工衛星の軌道追跡などの宇宙技術でも古典力学が充分通用します。この古典 物理学は物理学の最も重要な部分であり、大学の低学年で重点的に学びます。古典力 学でも電磁気学でも数少ない法則と数学だけを使って多くのことが説明されます。そ こで気付くことは物理学法則が非常にきれいに体系化されていることです。この体系 の美しさは自然そのものの美しさを反映していると言えます。この美しさに触れるこ とは物理学を学ぶ喜びの一つとなっています。多くの公式を覚えた受験の物理学と違 って大学で学ぶ物理学は考える学問です。

19世紀の末頃からそれまでの古典物理学では説明できない現象が続々と発見され 新しい物理学の展開が求められました。これを受けて20世紀の初めに相対論が、少 し遅れて量子力学が生まれました。その後の発展も目をみはるものがありますが、物 理学の基本法則に関わるという点ではこの2つが20世紀の物理学を代表するものと 言えます。これらは光速に近い速度で動く時、天文学的に強い重力を受ける時、ある いは極微の世界で必要とされる法則ですが、その影響が巨視的な大きさの世界、つま り日常生活の世界でも現れる現象が見つかってきましたし、その応用も急速に進んで います。超伝導、レーザー、半導体、原子力などの20世紀の科学と技術の背景に現 代物理学があります。高校の化学でも習う周期律を本当に理解したり、現代の先端技 術の背景を理解できることも物理学を勉強する喜びの一つと言えます。

原子、原子核、素粒子の世界から宇宙まで

極微の世界を探求する手段として量子力学が開発され、これを使って原子の性質を研 究することが始まりました。単独の原子の性質は電子の運動を説明することでかなり 正確に理解できます。しかし、多くの原子が結合している場合、単独の原子からは予 想もできなかった物質の豊かさが現れ、多くの発見と応用につながっています。前述 の超伝導、レーザー、半導体などは現代物理学の産物です。この分野の物理学は物性 物理学と呼ばれ、今後も発展していく重要な分野となっています。

また、原子の奥にある原子核の構造、原子核を構成している核子の構造、さらにその 基本粒子はどうか、という物質構造の基本を極めようという素粒子物理学の研究は加 速器という巨大実験装置を使って進められています。これによって物質はクオークと レプトンとで構成されているという現代の物質観にたどり着きました。しかしこれが 終点ではありません。基本粒子の内部構造を追求すると共に粒子の間に働く力を統一 的に理解しようという試みも進んでいます。この研究は宇宙初期に実現されていた現 象とも結びつきますので、素粒子物理学は宇宙物理学との接点を持つことになりまし た。力の進化、物質の進化、宇宙の進化などの自然認識の根源に関わる問題が検討さ れています。いまや宇宙物理学は物理学の重要な分野になってきています。

現代物理学は自然観の基本に関わる疑問に対して解答を与えはじめています。21世 紀になってもまだまだ物理学の発見は続きます。多くのみなさんが私たちといっしょ に物理学を勉強し、科学の進歩に参加する喜びを味わうことをお勧めします。